白湯とPOP

白湯とPOP

映画、ドラマの感想、東洋医学の雑感などポチポチブログ更新していきます。

社会を変えるには、まずは自分から 映画「GOGO 94歳の小学生」

「GOGO 94歳の小学生(原題:GOGO)」は、ゴゴ(おばあちゃん)というあだ名で小学生から呼ばれる、94歳の現役助産師、プリシラの生活がかかれたドキュメンタリー。94歳の女性が小学校で教育を受ける過程を、じっくりと見ることによって、今まで知らなかったケニアという国や、世界の教育の現状なんかに、少しだけ詳しくなれる、そんな映画でした。

 

f:id:sayu10pop:20210208150312j:plain

 

 

◆こんな映画

ケニア在住の94歳、プリシラ・ステナイは助産師としての長いキャリアを持っているが、実は小学校を卒業していない。ある日、ひ孫たちが学校に通っていないことに気付き、ひ孫たちと一緒に自分も小学校への入学を決意する。

プリシラは目と耳が悪く、机に向かって教育を受けた経験もほとんどないため、小学生に混じって勉強をするにも一苦労。時にひ孫に勉強を教えてもらい、時には先生に叱られ、時には友達に愚痴をこぼし、小学校卒業試験に挑む姿を追ったドキュメンタリー作品。

 

www.youtube.com

 

 

◆ドラマ性はそこまでないドキュメンタリー

ケニアでの就学率の低さや、プリシラ助産師としてのキャリアについては、最初に画面上に文章で説明されるだけで、あとは会話の中で話題になる程度です。

ドキュメンタリー映画の中でも、強く問題提起をするような部類ではなく、あくまで淡々とプリシラの就学の様子を映している作品です。人によっては、牧歌的な可愛い映画と感じるだろうし、初等教育の重みを改めて感じる人もいるかもしれません。

途中で挟み込まれる音楽は、無理に平和的な空気を醸し出している感じがして、個人的に違和感を覚えたのが、唯一の残念だった点です。

 

 

 

◆旧植民地の言語の傾向

劇中、小学生のほとんどが英語を話します。逆に現地語のスワヒリ語で話していても、途中で急に英語を話しだします。アフリカの他の国でもこの傾向はみられるし、インドや、東南アジアなどのアジア圏でもよくみます。(インドは映画でも、二言語混ぜた会話になっていることは、よくあります)

この傾向不思議だったんですが、本作の舞台である小学校でも、英語とスワヒリ語を混ぜて行っているクラスもあったので、こういう所の影響もひょっとしたらあるのかもな、と思いました。

 

多言語であるのは素晴らしいですが、現地語だけでは、会話が完結しない、二言語を混ぜる癖がついてしまうのは、せっかく語学習得環境が整っているのに、もったいないなぁと思いました。

基本日本語でしか授業が行われない日本からしたら、見方によればケニアの方が「国際的」と言えるんでしょうけど、将来的に彼らが真にバイリンガル(二言語を操れる)と呼ばれるまでになるかは、疑問が残りました。

 

f:id:sayu10pop:20210208150345j:plain

 

 

◆魅力的なキャラクターたち

魅力的なキャラクターの人が多かったのが、本作の最大のハイライトだったと思います。

 

学校の敷地内にディナという、プリシラの同年代の女性が住んでいて、プリシラのお友達として登場します。この2人の会話シーンが、また凄い。お互いマイペースにずっと喋ってるんですよ、「会話できてる?相手の話聞いてる?」っていうくらい。いうなれば、ケニア黒柳徹子VS黒柳徹子。でもね、なんとなくお互い通じ合ってるんですよ。

 

f:id:sayu10pop:20210208150113j:plain

黒柳徹子 VS 黒柳徹子



 

 

プリシラの担任の先生は、敢えてプリシラを特別扱いはせず、厳しい言葉もかけます。その遠慮のなさが、真に教育者だなと思わせる、愛情深い人で印象に残りました。

余談ですがその先生が、マイケルジャクソンのスリラーばりの赤ジャケット着てるんですよね。旅行のシーンとか、授業の合間にちょいちょい見ることが出来るので、ぜひ、この小ネタの赤ジャケにも注目してほしいです。

 

f:id:sayu10pop:20210208150224j:plain

赤ジャケ先生の、素敵なワンピースシーン

 

 

 

 

◆次はプリシラ助産師としてのキャリアも見てみたい

まぁ、でも1番魅力的なキャラクターだったのは、間違いなくプリシラですね。教育への意識が高いけれども、なんともお茶目で少女みたいな純粋さがあるんです。

劇中少しだけ、プリシラ助産師としての腕を拝見できるシーンがあります。妊婦さんのお腹を、触診をするシーンなんですが、なんともパワーのあるシーンだったんですよね。願わくば、彼女の助産師としての日常も見てみたいなぁと思いました。

 

 

本作は、難しい雰囲気は全くなく、ゆったりと鑑賞した後に、少しケニアの現状や女性の教育などの知見が深まるような映画です。あまりドキュメンタリーは得意じゃないという人にも、オススメできると思うので、興味が湧いたら、ぜひプリシラの奮闘を見に行ってみてください。ほんと、可愛い女性ですよ。

【ネタバレ】重めのインド社会見学へようこそ Netflix映画「ザ・ホワイトタイガー」

Netflix映画「ザ・ホワイトタイガー(原題:THE WHITE TIGER)」、意外と派手さはなく、重いストーリーを見続けられる集中力が求められます。ただし、脚本と映像のパワフルさにはグイグイ引き込まれるので、だれずに2時間7分、インド社会をじっくりと見ることが出来る作品です。

(本感想は、ネタバレを含ます、未視聴の方はご注意ください)

f:id:sayu10pop:20210201110040j:plain


 

◆こんな映画

インドの田舎出身の主人公バルラム(インド出身、アダーシュ・ゴーラヴ)は最下貧困層の生まれ。生家にいる時は大家族のために働かされ、運転手へ転身してからも、家族と雇い主である富裕層家族から搾取される人生。また、そこに「幸福」を見出せるほどに、貧乏人、使用人としての価値観が刷り込まれている。

自分の人生を左右する選択を何度か経験することにより、徐々に刷り込みの価値観から解放され、起業家へと転身するバルラム。

ストーリーは、インド訪問予定の中国の国家主席に対して、主人公が「インドについて」、「現在に至るまでの自分」を語る形式ですすみます。

www.youtube.com

 

 

◆いわゆるサクセスストーリーではない

あらすじを聞くと、サクセスストーリーかなと思わせますが、実際成り上がっていく過程は、後半に20分割かれる程度です。

焦点となるのは、生まれた時点から階級が決められている、インドカースト社会に、凡人が抗っていくには何をすればいいのかという点です。

圧倒的に面白いのが、ナレーション。中国とインドは、外から見れば広大な国土、人口爆発、貧富の差という共通点の多いアジアの大国。今後も公共事業政策などで距離を縮めるであろう2か国に対して、バルラムが切れ味良く語り掛けていくのが現代的。

 

 

 

◆ホワイトタイガーとは?

主人公のバルラムが、劇中度々「ホワイトタイガー」を特別であることの比喩表現としてつかいます。

バルラムは現在だけを見れば、確かに特別ではありますが、野心家に転身する過程は、意外と地味です。ことあるごとに傷つき、悩み、もがいていく、そんな生身の人間が、人生を劇的に変える起爆剤に手をつける流れです。

f:id:sayu10pop:20210201110703j:plain

前半はこんな感じ

 

そもそも、自然界のホワイトタイガーは、白色はかえって目立つので(黄色と黒のしま模様は、森の中に隠れやすい)、餌の確保にも苦労するトラです。毛の大部分が白いだけで、他のトラと能力も変わりません。主人公が「悪目立ちするだけの、普通のトラ」となるのか、「崇高で神がかった白いトラ」となるのか、今後の展開はどちらとも読める終わり方をしています。

 

f:id:sayu10pop:20210201105838j:plain

後半はキャラ変更

 

◆脚本がいい、映像がいい、案外2時間7分は短い

上映時間は割と長いですが、テンポがいいので、気づいたらエンドロールのパターンです。映像の大半が、過去を振り返るものですが、現在の主人公が悟りきった感じで、毒舌ナレーションを入れるのがいいスパイス。

 

f:id:sayu10pop:20210201110034j:plain

 

因みに劇中、運転手として仕えた金持ち一家の次男夫婦についても、バルラムがナレーションで切り刻んでいます。インド出身の夫からは、富を持ってしても、階級に抗えない苦悩が見え、インド系アメリカ人の妻からは、アメリカンサクセスストーリーがくどいくらい見えるのも面白い。彼女が、最初から最後までインドになじめず、口を開けば「アメリカでは・・・・」、夫には「いつNYにかえるの」と迫っているのも、笑えるおまけです。

激動の半生を色彩豊かに振り返る、偽ドキュメンタリー映画「アイ、トーニャ、史上最大のスキャンダル」

嘘やろ?こんな人生ありかいな

 

こんにちは、久々のビーチサンダルで鼻緒ずれ、白湯です。

 

映画「アイ、トーニャ、史上最大のスキャンダル(原題:I,TONYA)」やっとこさ見ました。友人たちが口を揃えて絶対に面白いから見た方がいい!と勧めてくれていたので、重い腰を中腰くらいまで上げて、見てみました。

 

◆ストーリー

実在のアメリカ人フィギュアスケータートーニャ・ハーディングのスケーターデビューから、引退後少しまで描いた作品です。

トーニャ・ハーディングアメリカで初めてトリプルアクセルを成功させたフィギュアスケーターでありながら、ライバル選手に怪我を負わせた責任を取って、強制的にスケートを辞めざるを得なかった選手。インタビュー形式で過去を回顧する方法で物語は進んでいきます。

 

www.youtube.com

 

 

◆面白かった!と素直に言いづらい、悲惨な半生

正直、見終わった後にどうしたらいいのか分からなくなった映画でした。

映像も脚本も申し分なかったのですが、まざまざと見せつけられたトーニャ・ハーディングという選手の人生に「うそやろ?」って言うしかなかったですね。

彼女の事はこの映画を見るまで知りませんでしたが、ものすごく才能のあるスケーターだったことは容易に想像がつきました。その上で、彼女の強さともろさと、あまりに恵まれない人間関係になんも言えないです、これは。主演のマーゴット・ロビー(「スーサイドスクワッド」)始め、面白おかしい演技と演出だけが救いですね。それくらい、悲惨です。

f:id:sayu10pop:20210120122103j:plain

 

 

フィギュアスケートの採点に関する問題は、今も続いている

トーニャ・ハーディングは色んなものと戦った人ですが、一番はやはりフィギュアスケートそのものとの闘いが見どころなんじゃないかと思います。身体能力を活かした、ジャンプの高さ、スピンの速さは定評があったものの、その前衛的なプログラム構成で芸術点が伸び悩んだ描写が、随所に見られます。

 

この芸術点の壁で悩んだ選手って恐らく彼女だけじゃないですよね。「これはフィギュアスケートじゃない」と審査員に言われれば、それまでの世界で、ユニークなスタイルの追及を辞めなかったのはすごいなと思います。この辺り、20年経った今は少しは変わってきてるんですかね?

 

f:id:sayu10pop:20210120122123j:plain

 

◆総評

ことごとく悲惨な話ではありましたが、できうる限りエンターテイメントとして作られていた本作は秀作だと思います。

このトーン、このテンポじゃなきゃ、絶対に見られませんでした。

 

全て俳優が演じているのにもかかわらず、回顧ドキュメンタリー調で作られているのも、良かった。あるある、絶対にドキュメンタリー作ったら、このキャラクターこんなクソ発言しそう。。。っていう、臨場感はたっぷりです。

 

映画「新解釈 三国志」中毒性の高い独特の娯楽作品

福田雄一ワールド全開、怒涛のオリジナル三国志

 

こんにちは、白湯です。

2020年はエンターテイメントが、新たな局面を迎えた年でもありましたね。難しい1年だったのは間違いないけど、映画も大ヒット作が出たのは、良かったなと思いました。

さてさて、今回はそんな2020年最後の公開、遅れてきた大物感の強い邦画、「新解釈 三国志」について感想を書いていきます。

 

 

◆ストーリー

三国志の「桃園の誓い」から「赤壁の戦い」の史実(?)を新たに解釈しなおした内容を、歴史学者(映画「釣りバカ日誌シリーズ」西田敏行)が講義する形で、シーンが再現されていく。

魏・蜀・呉の三国が中国統一を目指して争っていた乱世において、魏の曹操(映画「罪の声」、小栗旬)蜀の劉備(映画「探偵はBARにいるシリーズ」、大泉洋)、呉の孫権(TV「MIU404」、岡田健史)が、いかにして「赤壁の戦い」に臨んだかが描かれます。

 

www.youtube.com

 

 

◆まさに「新解釈にもほどがある」、娯楽大作

ストーリーは、確かに三国志。ただし、各主将陣のキャラクターはかなりカジュアルダウンされているし、全体的にすごくしょうもない。まさにオリジナルストーリー。

但し、三国志は、元から誇張された神がかった逸話が多いので、今回の新解釈の方が現実的にありうる線だなとも思えるところもありました。ここは上手いですね。

 

展開も、キャストの会話劇に主軸を置いているので、早いような、遅いような独特のスピード感。結構ストーリーを凝縮して詰め込んでいるので、出演者はめちゃくちゃ多い。そういう意味では、目まぐるしさもありますね。

 

全体的に、難しいことは抜きで笑って楽しめる作品に仕上がっているので、本作のキャッチコピー「2020年、みんながこれを待っていた」は、ピッタリはまる。(撮影は19年春)

 

 

f:id:sayu10pop:20210118163107j:plain

 

 

◆浮かぶ疑問とじわる笑い、締めのにくさ

開始10分後に、まず違和感を覚えました。どうも展開、台詞、演技のすべてが深夜ドラマのようで、「これ、そもそも映画って呼べるのか?」という疑問を持ったからです。特に台詞は独特で、本当にただダラダラ会話しているだけに見えるシーンも多い。

俳優陣が撮影を楽しんでいる様子が、克明に映像に現れるので、舞台裏を見せられすぎているようにも思いました。

 

これは私が福田監督の作り上げる、エンターテインメントに馴染みがなかったのが、一番大きなポイントだったと思う。

逆に言うと、この独特の表現方法が、映画というスケール感に圧倒されることなく、イキイキと映し出されているのは、ある意味凄い。

 

しかも、後半怒涛の展開が一気にきます。少し最初は我慢が必要かもしれないけれども、総合して考えると、チケット代の元はとったなーと思える、エンターテインメントに仕上がっています。

 

f:id:sayu10pop:20210118163430j:plain

全編通して、このノリ

 

 

おちゃらけの中で光る、俳優陣の演技力

「それ、三国志のストーリーに必要?」と思うシーンが多いのは前述した通りですが、キャスト陣はテンポをキープした、着実な演技を見せてくれます。

意外とこの作風に合わせて、だれない演技を見せるのって難しいと思います。ノリだけで継続される会話もあるので、キャストの演技力が弱いと、シーンが崩壊してしまう危険性もある。

正直、演技力無駄使いな気もするけど、この世界観を作り上げるのに欠かせない要素なのは間違いない。

 

キャラクター設定もありますが、私は個人的に劉備を演じた大泉洋の演技が好きでした。彼のぼやき節全開で、前半は完全に大泉洋そのまんまって感じでしたが、後半は、まぁ、かっこいい。

あと、大泉洋はスタイルがいいので、台詞を除けば、かなりかっこいい劉備だったと思う。

 

f:id:sayu10pop:20210118163149j:plain

笑いもシリアスも全部載せ 劉備

それから、渡辺直美の起用。おちゃらけているようで、「美」について考えさせられる深いシーンでもありました。彼女の登場シーンは、予告編でもよく使われているので、あとは見てのお楽しみってことで、コメントは控えておきます。

 

f:id:sayu10pop:20210118163228j:plain

出てきた瞬間、画面をかっさらう女優

 

意外な才能が見えたのが、趙雲を演じた岩田剛典。

趙雲の武器である長槍のアクションシーンに抜群の安定感。長槍は、遠心力がかかるので、恐らくアクションが難しいと思うのですが、とにかく上手い。そうでした、彼はラクロスのいい選手だったって話でしたね。

他のキャストでも長槍を使っている人はいるので、ぜひ比べてみてください。

 

とにかく、キャストが多いので、お気に入りがそれぞれみつけられる楽しみもありますね。

私が観に行ったのは平日のお昼間でしたが、男性はパラパラいるだけで、あとは若い女性陣が殆ど。そうだよね、旬のかっこいい俳優さんも、いっぱい出てるもんね。

 

 

◆ある程度の基礎知識は必要

基本的に知識ZEROでも楽しめるエンターテインメント作品ですが、三国志の知識が多少あった方が、抱腹絶倒の「新解釈」を、より楽しめるはず。時間がある人は、事前に赤壁の戦いをかいたドラマか、映画「レッドクリフ」のPart1、Part2を見ることをお勧めします。

 

三国志のストーリーとしては新解釈なんだろうけど、エンターテインメントとしては新感覚だなーというのが素直な感想。

いずれにしても、この作品は恐らく「ひどい」か「最高」かの両極端な評価しかつかない気がします。ただ、この監督の作り出す世界観と笑い、中毒性ありますね。こりゃ、この監督のファンが周りに多いの分かるわ。勉強になりました!

 

 

 

 

 

映画「フェアウェル」じんわり感想

現代の中国を優しく照らす、フェアな作品

 

第3のビールを飲み過ぎて、久々にビールを飲むと圧倒されてしまう白湯です。

 

去年、ゴールデングローブ賞を受賞した映画「フェアウェル(Farewell)」、やっと見れた!

 

間違いなく重いし、家族の葛藤は見ていて辛い。でも、ジャンルは間違いなく、コメディでしたね。お下劣ギャグも、派手なCGも使わずに、観客をくすっと笑わせて、ほんわか気持ちを温かくさせる、そんな素敵な映画でした。

 

◆ストーリー

中国に住む祖母(チャオ・シュウチェン)に癌が見つかり、医者より余命宣告を受けるが、祖母には告知しないと決めた親族たち。

祖母に悟られないように、最後の時間を家族で一緒に過ごすため、孫息子であるハオハオの結婚式をでっちあげることにする。

 

中国、アメリカ、日本在住の息子家族が帰郷し、「嘘の結婚式」を挙げるまでの数日間が、孫娘のビリー(「オーシャンズ8」のオークワフィナ)の視点を通して描かれます。

 

www.youtube.com

 

◆家族あるあるに思わず共感

まず家族が一同に介する様子は、共感できるシーンが多い。

家族って理屈じゃない。いくら祖母が余命宣告を受けていても、嫁姑問題が収まるわけでもなく、宴席があれば女性陣は台所で大家族用の料理作りに没頭する。

 

「あるよ、あるよ、こういうの日本のお正月でもー」って何回うなずいたか。

 

f:id:sayu10pop:20201109184659j:plain

お母さんは、エプロン持参で帰郷!

 

 

◆視点の公平(フェア)さ

家族と一口に言っても、世代によって発言内容も態度も様々。監督の視点は、孫世代のビリーに近いのだろうけど、どの世代の意見も公平に映しだしているのが面白かった。

 

家族の会話の中で語られる「中国」、「海外移住後の生活」、「現代中国の景気」に対する、3世代の意見はそれぞれ鋭い!

 

見る人によって、どのキャラクターに肩入れするかは分かれると思うので、見終わった後に、家族で、友達で、感想を伝え合ってみるのも面白いと思います。

 

 

f:id:sayu10pop:20201109195613j:plain

 

 

◆最後は監督の信念に唸る

監督自身が長く温めていた企画で、非常にパーソナルな作品だとインタビューで言っていたのがよく分かりました。

 

監督は北京語は書く事ができないため、両親に台詞作りは協力してもらったらしいし、主演女優のオークワフィナもこの映画のために、北京語を習得している。

そこまでして、北京語を通したことで、作品はぐっと深みを増しています。いわゆるハリウッド映画なら、ご都合主義的に登場人物に英語を話させたりしそうなもんですけどね。

 

アメリカ製作でありながら、騒がしくも温かい、THEアジア映画が作れたこと自体が、本当に凄いことだと思います。

 

f:id:sayu10pop:20201109195651j:plain

シリアスな演技も行ける!オークワフィナ

 

新しい時代の「映画の力」みたいなものも感じられる本作、淡々と進むようでドラマ性も十分にあり、見ごたえのある1本!ってことで、かなりおすすめです。

映画「キンダーガートン・コップ」振り返り感想:アクション、家族、コメディのいいとこ全部載せの、戸惑いの90年代ヒット作

アクション、家族、コメディのいいとこ全部載せの、戸惑いの90年代ヒット作

 

心に鞭打って、走ろうとしたら雨が降る。あたしの頭の上の天気すら怠惰・・・・こんにちは、白湯です。

 

キンダーガートン・コップ(Kindergarten Cop)」。TVで10回は絶対に観た。でも、全部日本語吹替、なんならCMも入ってた。最悪家族の誰かがなんか喋ってた。。。これ、1回ちゃんと観ないと、観たって言えなくない??ってことで、観ました。

 

◆ストーリー

麻薬密売組織のボス、カレン・クリスプを追う刑事ジョン・キンブル(シュワちゃん)。クリスプの元妻が身元を隠し、ボストン近郊で生活をしているとの情報をつかみ、女性警官とともに現地に向かう。女性警官が教師として学校に潜伏中、元妻を保護者の中からあぶりだす作戦が、最終的にキンブルが教師として潜伏する羽目に。。。。

 

www.youtube.com

 

脚本も面白かったし、アクションスターがまさかの子供に手を焼くシーンも、いつみても鉄板。しかも初めて字幕版で見て、シュワちゃんオーストリア出身という設定で、若干英語が訛ってる事に気付いた。30年前の作品だけど、今でも十分通用する娯楽作品でした。

 

 

◆俳優シュワ氏のキャリア

ターミネーターが84年、コマンドーが85年、プレデターが87年、ここでアクション俳優としては休憩。そこからツインズが88年、で、この映画が90年。なるほど、演技の幅を広げてるシュワちゃんだったことが伺い知れますね。

f:id:sayu10pop:20201028201524j:plain

いいキャッチコピー

 

 

◆俳優シュワ氏の演技

ただ、このころのシュワちゃんの恋愛演技は若干粗削り。

まず、いちいち眼光が鋭い。びっくりしたり、心配したり、ちょっとゆっくり振り返ってみたりしたときに、その先にあるのは命懸の肉弾戦に見えちゃう。

それと、キスシーンが結構パワフル。なんか、全然ほっと出来ない。共演女優も気合が求められる感じ。

 

それから本編の中でシュワ捜査官のことを、保護者が「新任の先生男らしいわよ~」って噂話をするシーンがあるんです。

それで、実際目の前をシュワちゃんが通ったときに、「あたし、今日化粧してない!」って慌て始める。この反応って、シュワちゃんが男性として魅力あふれてたってことですよね?

 

でもそのシーン、いつものシュワちゃんが、ピッタピタのポロシャツを、ズボンにインして、軍隊の将校みたいに歩いているだけだったんですよね。保護者が色めき立つポイント、見えず。

 

こっちの見る目が固定されちゃってるんですかね?いや、90年代基準でいえば、そんなシュワちゃんが、イケメンだったってこと?これが作り手と受け手の、温度差ってやつっすかね。。。それとも、時代?

もしイケメン度が筋肉量で測れるんであれば、抜群だとは思うんですけどね。。。。

 

f:id:sayu10pop:20201028201354j:plain

まさかの「イケメン枠」

 

大人になってから見てしまうと、なんか微妙な描写が妙に気になる、そんな映画でもありました。

 

 

<オススメ度>

リンダハントのキャラクターはいつ見ても大好き ★★★★★

麻薬密売組織のボス、ぬぐいきれないズラ疑惑 ★★★☆☆

映画「バットマン ビギンズ」いまさら感想:明暗のバランス感覚に優れた、現代のバットマン

明暗のバランス感覚に優れた、現代のバットマン

 

秋はビール派か、焼酎お湯割り派か?!いや、紹興酒でしょ!!!白湯です。

 

せっかくなので「ノーランもん」制覇してみようかなと思って、「バットマン ビギンズ」(原題:Batman Begins)今更見ました。

 

◆ストーリー

ブルース・ウェイン(「フォードVSフェラーリ」 クリスチャン・ベール)が、幼少期に両親を殺害された心の傷を乗り越えて、バットマンとしてゴッサムシティに返り咲くまでを丁寧に書いた作品です。

お決まりの、執事のアルフレッド(「キングスマンマイケル・ケイン)もいるし、ゴードン刑事(「ウィンストン・チャーチル」のゲーリー・オールドマン)もまだまだ地位が低いところからスタート。バットマンファンが欲しい要素はちゃんと網羅されてました。

 

www.youtube.com

 

◆過去の映像化作品と比較すると

マイケル・キートン主演のバットマンは暗すぎ、グロすぎ。バル・キルマー主演のバットマンは、うん。。。ジョージ・クルーニー主演まで来ると、遊園地のヒーローショーみたいになっちゃって。。。バットマンの実写化って、ほんと解釈次第、監督の匙加減次第でガラッと変わる。

ダークナイト3部作、1作目である本作は、公開当時は少し地味な印象がありましたが、過去映像化されたバットマン作品の中で、一番バランスのいい作品だなと思いました。

 

言ってもゴッサムシティのお話なので、基本ダーク。でも、ハリウッドアクション映画の明るさもありましたね。

バットマンとして活躍するまでのウェインの修行のシーンで忍者登場したり、バットマンがピンチにマキビシまいたり。バットマンお得意のスーツや、車などの装備品を作る過程も、なんか新商品の開発みたいで面白かった。敢えて原作にそれほど肩入れしてないクールさが、本作の最大の持ち味だと思いました。

 

f:id:sayu10pop:20201020114330j:plain

かっこよすぎのこのポスター

◆配役の妙

ブルース・ウェインって、基本は大富豪のボンボン。上品さも必要だし、バットマンとしての渋さも必要だし、アクションヒーローとしては、割と多様さが求められるキャラクターだと思います。言わずもがな、クリスチャン・ベールは両方上手でしたね。

 

これまでのキャリアは常にカメレオン俳優全開だったので、この普通の青年を演じるクリスチャン・ベールは貴重といえば貴重でしたね。体つくり過ぎて、シャツぱっつんぱっつんだったし、大学生演じるには、マッシュルームカットだけでは隠し切れない深みがありましたけどね。

 

それから、個人的にはゴードン刑事に扮するゲーリー・オールドマンがいつ裏切るか心配でしたね。いや、最後までちゃんと正義を貫くゴードン刑事なんですけど、ゲーリー・オールドマン出てきただけで、なんかハラハラしちゃうんですよね。演技上手いってすげー副作用もある。

 

f:id:sayu10pop:20201020114455j:plain

出てくるだけで、ヒリヒリ感(勝手に)

次はいよいよ、大本命のダークナイト鑑賞。今でも人気が高い作品なので、今更やけど見るのが楽しみ。

 

<オススメ度>

1作目のレイチェルは、ケイティーホームズだったのね!!! ★☆☆☆☆

奇跡のちょい役 ケン ワタナービー ★★★☆☆

一番のピンチで執事に電話でSOS、ボンボンバットマン。。。 ★★★★★