映画「フェアウェル」じんわり感想
現代の中国を優しく照らす、フェアな作品
第3のビールを飲み過ぎて、久々にビールを飲むと圧倒されてしまう白湯です。
去年、ゴールデングローブ賞を受賞した映画「フェアウェル(Farewell)」、やっと見れた!
間違いなく重いし、家族の葛藤は見ていて辛い。でも、ジャンルは間違いなく、コメディでしたね。お下劣ギャグも、派手なCGも使わずに、観客をくすっと笑わせて、ほんわか気持ちを温かくさせる、そんな素敵な映画でした。
◆ストーリー
中国に住む祖母(チャオ・シュウチェン)に癌が見つかり、医者より余命宣告を受けるが、祖母には告知しないと決めた親族たち。
祖母に悟られないように、最後の時間を家族で一緒に過ごすため、孫息子であるハオハオの結婚式をでっちあげることにする。
中国、アメリカ、日本在住の息子家族が帰郷し、「嘘の結婚式」を挙げるまでの数日間が、孫娘のビリー(「オーシャンズ8」のオークワフィナ)の視点を通して描かれます。
◆家族あるあるに思わず共感
まず家族が一同に介する様子は、共感できるシーンが多い。
家族って理屈じゃない。いくら祖母が余命宣告を受けていても、嫁姑問題が収まるわけでもなく、宴席があれば女性陣は台所で大家族用の料理作りに没頭する。
「あるよ、あるよ、こういうの日本のお正月でもー」って何回うなずいたか。
◆視点の公平(フェア)さ
家族と一口に言っても、世代によって発言内容も態度も様々。監督の視点は、孫世代のビリーに近いのだろうけど、どの世代の意見も公平に映しだしているのが面白かった。
家族の会話の中で語られる「中国」、「海外移住後の生活」、「現代中国の景気」に対する、3世代の意見はそれぞれ鋭い!
見る人によって、どのキャラクターに肩入れするかは分かれると思うので、見終わった後に、家族で、友達で、感想を伝え合ってみるのも面白いと思います。
◆最後は監督の信念に唸る
監督自身が長く温めていた企画で、非常にパーソナルな作品だとインタビューで言っていたのがよく分かりました。
監督は北京語は書く事ができないため、両親に台詞作りは協力してもらったらしいし、主演女優のオークワフィナもこの映画のために、北京語を習得している。
そこまでして、北京語を通したことで、作品はぐっと深みを増しています。いわゆるハリウッド映画なら、ご都合主義的に登場人物に英語を話させたりしそうなもんですけどね。
アメリカ製作でありながら、騒がしくも温かい、THEアジア映画が作れたこと自体が、本当に凄いことだと思います。
新しい時代の「映画の力」みたいなものも感じられる本作、淡々と進むようでドラマ性も十分にあり、見ごたえのある1本!ってことで、かなりおすすめです。