社会を変えるには、まずは自分から 映画「GOGO 94歳の小学生」
「GOGO 94歳の小学生(原題:GOGO)」は、ゴゴ(おばあちゃん)というあだ名で小学生から呼ばれる、94歳の現役助産師、プリシラの生活がかかれたドキュメンタリー。94歳の女性が小学校で教育を受ける過程を、じっくりと見ることによって、今まで知らなかったケニアという国や、世界の教育の現状なんかに、少しだけ詳しくなれる、そんな映画でした。
◆こんな映画
ケニア在住の94歳、プリシラ・ステナイは助産師としての長いキャリアを持っているが、実は小学校を卒業していない。ある日、ひ孫たちが学校に通っていないことに気付き、ひ孫たちと一緒に自分も小学校への入学を決意する。
プリシラは目と耳が悪く、机に向かって教育を受けた経験もほとんどないため、小学生に混じって勉強をするにも一苦労。時にひ孫に勉強を教えてもらい、時には先生に叱られ、時には友達に愚痴をこぼし、小学校卒業試験に挑む姿を追ったドキュメンタリー作品。
◆ドラマ性はそこまでないドキュメンタリー
ケニアでの就学率の低さや、プリシラの助産師としてのキャリアについては、最初に画面上に文章で説明されるだけで、あとは会話の中で話題になる程度です。
ドキュメンタリー映画の中でも、強く問題提起をするような部類ではなく、あくまで淡々とプリシラの就学の様子を映している作品です。人によっては、牧歌的な可愛い映画と感じるだろうし、初等教育の重みを改めて感じる人もいるかもしれません。
途中で挟み込まれる音楽は、無理に平和的な空気を醸し出している感じがして、個人的に違和感を覚えたのが、唯一の残念だった点です。
◆旧植民地の言語の傾向
劇中、小学生のほとんどが英語を話します。逆に現地語のスワヒリ語で話していても、途中で急に英語を話しだします。アフリカの他の国でもこの傾向はみられるし、インドや、東南アジアなどのアジア圏でもよくみます。(インドは映画でも、二言語混ぜた会話になっていることは、よくあります)
この傾向不思議だったんですが、本作の舞台である小学校でも、英語とスワヒリ語を混ぜて行っているクラスもあったので、こういう所の影響もひょっとしたらあるのかもな、と思いました。
多言語であるのは素晴らしいですが、現地語だけでは、会話が完結しない、二言語を混ぜる癖がついてしまうのは、せっかく語学習得環境が整っているのに、もったいないなぁと思いました。
基本日本語でしか授業が行われない日本からしたら、見方によればケニアの方が「国際的」と言えるんでしょうけど、将来的に彼らが真にバイリンガル(二言語を操れる)と呼ばれるまでになるかは、疑問が残りました。
◆魅力的なキャラクターたち
魅力的なキャラクターの人が多かったのが、本作の最大のハイライトだったと思います。
学校の敷地内にディナという、プリシラの同年代の女性が住んでいて、プリシラのお友達として登場します。この2人の会話シーンが、また凄い。お互いマイペースにずっと喋ってるんですよ、「会話できてる?相手の話聞いてる?」っていうくらい。いうなれば、ケニアの黒柳徹子VS黒柳徹子。でもね、なんとなくお互い通じ合ってるんですよ。
プリシラの担任の先生は、敢えてプリシラを特別扱いはせず、厳しい言葉もかけます。その遠慮のなさが、真に教育者だなと思わせる、愛情深い人で印象に残りました。
余談ですがその先生が、マイケルジャクソンのスリラーばりの赤ジャケット着てるんですよね。旅行のシーンとか、授業の合間にちょいちょい見ることが出来るので、ぜひ、この小ネタの赤ジャケにも注目してほしいです。
◆次はプリシラの助産師としてのキャリアも見てみたい
まぁ、でも1番魅力的なキャラクターだったのは、間違いなくプリシラですね。教育への意識が高いけれども、なんともお茶目で少女みたいな純粋さがあるんです。
劇中少しだけ、プリシラの助産師としての腕を拝見できるシーンがあります。妊婦さんのお腹を、触診をするシーンなんですが、なんともパワーのあるシーンだったんですよね。願わくば、彼女の助産師としての日常も見てみたいなぁと思いました。
本作は、難しい雰囲気は全くなく、ゆったりと鑑賞した後に、少しケニアの現状や女性の教育などの知見が深まるような映画です。あまりドキュメンタリーは得意じゃないという人にも、オススメできると思うので、興味が湧いたら、ぜひプリシラの奮闘を見に行ってみてください。ほんと、可愛い女性ですよ。